免除ロイヤリティ料率で目標の営業利益率を記述する
2025年12月2日
鈴木健治
この記事は「2000字縛り!ゆる会計アドベントカレンダー2025」Advent Calendar 2025に参加しています。
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けいたろうさま、みなさま、貴重な機会をいただきありがとうございます。
1. ロイヤリティ免除法
ロイヤリティ免除法は、その資産を有することで支払を免れているロイヤリティ料率を使って資産や事業体の価値を評価する手法です。大家なのだけど店子になたつもりで考える方法で、セルアンドリースバックと近いかも知れませんが、譲渡が否認されたりはしません。
この免除ロイヤリティ料率は、通常、売上高(上代)に対する比率であり、別名多いです。
ライセンス料率
ロイヤリティ料率
実施料率(特許権)
使用料率(著作物)
利用料率(ブランド)
免除ロイヤリティ料率は、料率の相場を参照して、挟み撃ちをしながら、市場価値から大きくは外さない評価となる点が魅力です。
2. 算式
目標営業利益率 = wacc + 免除ロイヤリティ料率 (式1)
式1を使って未来を描いていきたいです。この式1の免除ロイヤリティ料率は、資産(簿価)、当期費用、簿外資源の全てから生み出される、waccを超える残余利益を求め比率ではないでしょうか。
営業利益 = 資産(簿価)Aが生む営業利益a + 当期費用Cが生む営業利益c + 簿外資源Rが生む営業利益r (式2)
式2は、営業利益の源泉となるあらゆるドライバーが含まれます。式1の免除ロイヤリティ料率を、式2のa, c, rに分配することを考えます。
簿外資源には、レピュテーション、減価償却後の実際上の使用価値、のれんなど、エンティティが支配できるものと、リレーションシップ(関係)、組織の気風など、支配してはいないものがあります。国際統合報告フレームワークの6資本の多くは簿外資源です。
建物など固定資産による営業利益
= 固定資産(簿価)A1が生む営業利益a1 + A1の当期減価償却費C1が生む営業利益c1 + 固定資産A1簿外資源R1が生む営業利益r1 (式3)
固定資産A1は回転率を掛けるとそれによる売上高になるので、A1に関するライセンス料率の相場と比較できます。金融資産、不動産のキャップレート、牛の利回りも参考とできます。
費用と利益率については、例えば、オランダのイノベーション税制 (opens in a new tab)(経済産業省, スライドp.12)は、ざっくり、製造の利益は売上原価に対する比率、マーケティングの利益は売上高に対する比率で求めて、超過部分を研究開発による利益として19%/25.8%の法人税を実効9%に減税します。当期費用が通常利益をもたらすと推認してます。
簿外資源がもたらす利益は、例えば、自己創設の特許権やブランド価値について、超過利益や残余利益を按分し、その際にライセンス料率や営業利益率の相場が参照されています。桜井久勝「残余利益モデルからみた会計基準の合理性」商学論纂,中央大学商学研究会,2016-03,57巻,3・4号,41-73頁)や、職務発明対価訴訟での独占の利益の算式(後述(6))、M&Aでのロイヤリティ免除法の利用など、多様です。
式1と式2を使いこなすために、資産に掛ける比率と、売上高に掛ける比率をより連続的に扱えるように、引き続き考えていきます。
3. ライセンス料の相場
(1) 発明協会研究センター 編「実施料率 : 技術契約のためのデータブック」第5版 (opens in a new tab)(発明協会, 2003.9)
初版1973年。外国技術を導入する際の相場。
(2) ボイス情報株式会社「ライセンス・プロジェクト・チーム」 企画・編集「ライセンス・ビジネス総覧. 1986」 (opens in a new tab)(ボイス情報1985.9)
(3),(4)の初版ともいえる。国立国会図書館デジタルコレクションで、図書館・個人送信サービス利用可。
(3) ボイス情報株式会社 調査・編集「ライセンスキャラクター名鑑. 2019」 (opens in a new tab)(2018.8)
(4) ボイス情報株式会社 調査・編集「ライセンスブランド名鑑. 2018」 (opens in a new tab)(2017.10)
(5) 経済産業省 企業法制研究会ブランド価値評価研究会報告書 (opens in a new tab)(2002.6)
慶應義塾大学商学部が保管、公開してくれている。
(6) 鈴木健治知的財産権の資産活用及び価値評価の視点から職務発明対価訴訟及び特許権侵害訴訟の判決を読む(2) (opens in a new tab)(パテントVol. 60 No. 8, 2007.8)
職務発明対価訴訟の大まか前半を分析したものとして。
(7) 経済産業省 経済産業政策局 知的財産政策室知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書 ~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~ (opens in a new tab)(2010.3)
(8) 経済産業省 経済産業政策局 知的財産政策室令和6年度 知的財産のライセンスに関する調査報告 (opens in a new tab)(2025.5)
(1)に続く調査として貴重なデータ。